グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



過活動膀胱


おしっこトラブルを改善しよう

みなさんは「突然おしっこがしたくなり、漏れそうになる」という経験がありませんか?これは「過活動膀胱」という病気の代表的な症状です。このほかにも、夜中におしっこに起きる、尿が漏れてしまうといったおしっこトラブルでお困りの方はとても多いです。今回はこのようなおしっこにまつわるトラブル・病気の解説をしながら、今日から出来る生活習慣作りについてお話します。

急におしっこをしたくなる過活動膀胱

人間には、おしっこをためる蓄尿期と、おしっこを出す排尿期があります。しかし、過活動膀胱になってしまった場合、蓄尿期と排尿期に乱れが起こります。そして、突然おしっこに行きたくなる「尿意の切迫感(図1) 」が起きたり、尿が漏れたり、おしっこをした後にすっきりしないなどのトラブルが起こります。過活動膀胱の診断には、「過活動膀胱症状スコア(図2)」 という質問項目を用います。ぜひ試してみてください。この病気は、運動不足、肥満、便秘、喫煙、過度のカフェインやアルコール摂取などの生活習慣にも原因があるため、生活習慣を改善するために行動することが大切です。その他、神経・脳の病気によって引き起こることもあります。

過活動膀胱の治療

過活動膀胱の治療法は、薬物治療・行動療法・その他の治療の3種類に分かれます。症状によって治療法は異なりますが、行動療法は幅広い症状に対して効果がありますので、是非取り組んでほしいです。

薬物治療

尿意の切迫感・切迫性の尿失禁・昼間の頻尿に対して薬物治療は非常に効果があります。男性の場合、前立腺肥大症の方が、過活動膀胱を合併しているケースが多いです。その場合、まず前立腺肥大症の薬物治療を行います。前立腺の肥大が解消して尿がスムーズに出るようになれば過活動膀胱の症状が改善することが多いですが、症状が残ったら過活動膀胱の治療薬を使うことになります。女性や前立腺肥大症が無い方の場合は過活動膀胱の治療薬を第一に使用します。

膀胱(がまん)訓練

おしっこを十分に溜めずに排尿していると膀胱が伸びなくなり、尿を溜められなくなります。それを改善するために、普段よりも5~10分程度我慢してから排尿してみましょう。尿意切迫感が強い場合は、薬物療法と共に行います。目標は2~3時間間隔で排尿量200~300cc/回です。

骨盤底筋体操

骨盤底筋(図3)を鍛えることで、尿道を締める力、内臓を支える力が維持できます。トレーニングのやり方(図4)は、お腹とお尻に力が入らないようにしながら、おなら・尿・便を我慢するように、力を入れます。その際に、女性は肛門の手前、男性は肛門と陰嚢の間に手をあてて、そこに力が入っているか確認すると良いでしょう。トレーニングの組み方としては(2秒×5回)+(5秒×5回)を1日10セット、もしくは(2秒→力を抜く→5秒)を10分間×1日2~3セットが良いと言われています。効果が現れるまでは個人差がありますが、まずは三ヶ月継続してみましょう。体勢は、ご自身が力を入れやすければ何でも良いため、お風呂の中や通勤中、就寝前、起きた後などどこでも行うことができます。

その他の治療(電気・磁気・仙骨神経刺激・ボツリヌス毒素)

膀胱や仙骨などの神経を電気・磁気で刺激する治療法は、患者さんの症状や状況によって医師が判断し、治療を行います。

厄介な夜間頻尿を治すために

70歳を超えるとほとんどの人が夜中に1度はトイレに行くために起きているデータもあることから、多くの方がこの症状に悩んでいます。夜間頻尿は薬物療法が聞きにくい場合が多く、非常に厄介です。夜間頻尿が起こる原因は様々ですが、それぞれ対策が異なります。(図5)夜間頻尿の原因は、複数当てはまる方が多いです。年齢と共に体の機能が衰えるため、夜間の尿量増加、睡眠の質の悪化、膀胱の筋肉の衰えで夜間頻尿は悪化していく傾向にあります。骨盤底筋のトレーニングや生活習慣の見直しをしながら、クリニックを受診して治療をしていきましょう。

尿が漏れてしまう(失禁)

次は尿漏れ・失禁についてです。失禁 は女性に起こるケースが非常に多く、80歳以上の女性では、30%以上が毎日の尿漏れに悩んでいると言われています。失禁にはタイプがあり、それを知ることが対処法に繋がります。

腹圧性尿失禁

咳やくしゃみ、笑ったときにお腹に力がかかることで漏れやすくなる、尿失禁のタイプの中でも最も多いタイプです。尿道を締める骨盤底筋が、加齢や肥満、妊娠により緩んでしまうことで、お腹に圧がかかると漏れやすくなります。

切迫性尿失禁

急に尿意を感じ、トイレに行くまで我慢できずに漏れてしまうものです。おしっこしたいと思ったら我慢できない状態になります。これは、本来は尿が膀胱に溜まると脳は排尿を我慢するように指示していますが、連携がうまくいかずに膀胱がおしっこを出す体制になっていることが原因です。外出中や車に乗っている時など非常に困るケースが多い失禁になります。

溢流(いつりゅう)性尿失禁

尿を出しにくくなるのが主な症状です。気づかないうちに少しずつ尿が漏れたり、日ごろから残尿感があって頻繫にトイレに行く人は、この可能性があります。原因は膀胱の収縮力が弱くなり、おしっこを出し切れず残尿になることや、周囲の臓器の影響によって尿道が狭くなると発生します。膀胱が残尿でいっぱいになると、行き場を失って尿道の隙間から漏れことになります。

機能性尿失禁

トイレに行くのに手間取る、衣服を脱ぐのに手間取る、尿意を介護の人に上手く伝えられない、トイレの場所がわからないことで漏れてしまうのが機能性尿失禁です。特に高齢者に多くみられる、排尿機能そのものには問題が無くても、排尿するまでの動作に問題があります。環境の整備(トイレの表示をはっきりさせる)や、脱ぎやすい衣服に変えるといった工夫で改善することがあります。

尿漏れを防ぐ生活習慣

排尿日誌をつける

起床時間・就寝時間・尿量・我慢できない尿意の有無・尿もれの量・飲み物の量・漏れた時の状況・一日の合計尿量などを記録します。(図6)これらを記録するときのポイントとして、最低3日間つけると尿もれに繋がる何かしらの原因が見つかりやすいです。尿量を測定するには目盛り付きの紙コップや計量カップを使用しましょう。

冷え予防

体が冷えると膀胱収縮、尿道弛緩をもたらし、トイレが近くなってしまいます。カイロや半身浴、湯たんぽなどで足や腰、下腹部を温めると、骨盤内の血流が良くなることで冷えが緩和され、尿もれや頻尿が改善されます。

適度な運動と腹圧管理

運動不足による全身の筋力低下は、骨盤底筋の筋力低下、体力低下をもたらし、トイレ動作に影響が出ます。そのため、日ごろからウォーキングやスポーツで体を動かすことは排泄にとって大事なことです。また、肥満・コルセットの締め付けすぎは下腹部に過剰な圧力がかかるため、子宮や膀胱の変形などのリスクがあります。さらに、便秘で大腸内に便が溜まると、子宮や膀胱を圧迫して膀胱のふくらみを阻害し、骨盤底筋に負担がかかってしまいます。先ほどお話した骨盤底筋体操やがまん訓練も有効です。

まとめ

排尿は大切な生理的行動です。そのため、排尿トラブルは生活の不自由さに直結します。自分の症状のタイプを知り、適切な治療を施していただきたいです。しかし、治療の際には、ご自分の病気など、専門的知識が必要になる場合が多々あります。ここでお話した今日からできる生活習慣の見直しや行動療法を行いながら、ご自分だけで悩まず、お近くの泌尿器科や産婦人科クリニックで診察を受けましょう。
なんぶメール25号より