前立腺肥大症
はじめに
みなさんは尿が出にくい、おしっこが近いなどの経験はありませんか?
これは「前立腺肥大症」の代表的な症状です。このほかにも尿の勢いがない、すっきりしないといったトラブルでお困りの方はとても多いです。
これは「前立腺肥大症」の代表的な症状です。このほかにも尿の勢いがない、すっきりしないといったトラブルでお困りの方はとても多いです。
前立腺肥大により排尿障害が生じたものは「前立腺肥大症」
前立腺は男性に特有な臓器です。膀胱の下にあり、尿道を取り囲んで存在し(図1-a b)、精液の一部である前立腺液を分泌して精液の中での精子の働きを助ける役割を担います。一部の男性では、年齢とともにこの前立腺が大きくなる傾向が見られます(前立腺肥大)。前立腺肥大により排尿障害が生じたものは「前立腺肥大症」と呼ばれ、男性の排尿障害の原因として有名です。
実際には前立腺が大きいと必ず排尿障害が生じる訳ではなく、前立腺肥大がなくても排尿に関する困った症状(下部尿路症状)が強く見られる場合もあります。しかし、下部尿路症状がみられ、かつ前立腺肥大が見られる場合には、前立腺肥大に対しての治療を行うことが下部尿路症状の改善の近道となるため、前立腺肥大の診察は下部尿路症状治療の基本となるのです。
実際には前立腺が大きいと必ず排尿障害が生じる訳ではなく、前立腺肥大がなくても排尿に関する困った症状(下部尿路症状)が強く見られる場合もあります。しかし、下部尿路症状がみられ、かつ前立腺肥大が見られる場合には、前立腺肥大に対しての治療を行うことが下部尿路症状の改善の近道となるため、前立腺肥大の診察は下部尿路症状治療の基本となるのです。
下部尿路症状をチェック
下部尿路症状は、「尿の勢いがない」「トイレが近い」「すっきりしない」などいろいろありますが、尿を出すときの症状(排尿時症状)、ためるときの症状(蓄尿時症状)に大きく分けられます。こうした下部尿路症状をチェックする際には、国際前立腺症状スコア(IPSS)と言われる質問票が使われます(図2)。
前立腺肥大で色々な下部尿路症状が見られるようになる
では何故、前立腺肥大で色々な下部尿路症状が見られるようになるのでしょうか。まず前立腺が大きくなると、前立腺部の尿道が押しつぶされて変形します(図1-b)。左右から前立腺の肥大結節が尿道に向かって大きくなることにより、通常であれば排尿時には円い筒になる尿道が、スリット状にしか開かなくなります。また背側からの圧迫が起こると尿道は屈曲して尿の通りがさらに悪くなります。さらに、前立腺肥大に伴い前立腺の中に含まれる平滑筋が増加し、尿道周囲の筋緊張が強くなり、排尿時の尿道の開きがより悪化します。また肥大した前立腺の内部は微細な炎症などを起こしやすく、前立腺に慢性的なむくみが生じて尿道の抵抗がより強くなることもあります。こうした様々な因子が重なって、尿を出す際の尿道抵抗が強くなっていきます(図3)。尿道の抵抗が強くなると、尿の勢いは自覚的には問題がなくても、排尿の際に膀胱に負担がかかるようになります。これが続くと徐々に膀胱の過敏性が上昇して蓄尿症状が生じ、症状はより複雑化していきます。
泌尿器科を受診された際には、問診に加え、前述の質問票(IPSS)を使って、患者さんの症状の確認を行います。検査としては、尿検査、超音波検査、採血などを行い、がんや尿路感染症・尿路結石など排尿障害を生じる他の疾患がないかを確認します。さらに泌尿器科的には尿流測定(尿の勢いを見る検査)、残尿測定(排尿後の残った尿の量を見る検査)、排尿記録(一日を通していつどのくらいの尿が出たかを見る検査)などを行い、個々の患者さんの問題点をチェックします。
泌尿器科を受診された際には、問診に加え、前述の質問票(IPSS)を使って、患者さんの症状の確認を行います。検査としては、尿検査、超音波検査、採血などを行い、がんや尿路感染症・尿路結石など排尿障害を生じる他の疾患がないかを確認します。さらに泌尿器科的には尿流測定(尿の勢いを見る検査)、残尿測定(排尿後の残った尿の量を見る検査)、排尿記録(一日を通していつどのくらいの尿が出たかを見る検査)などを行い、個々の患者さんの問題点をチェックします。
薬物療法について
治療としては、多くの場合は薬物療法を行います。前立腺肥大症で使用される薬物は大きく以下の4つの種類に分けられます。①平滑筋の緊張をゆるめて尿の出口の開きをよくする薬(α1遮断薬、PDE5阻害薬)、②前立腺のむくみをとる薬(生薬/漢方薬)、③前立腺を小さくする薬(5α還元酵素阻害薬など)、④膀胱の過敏性を改善する薬(β3刺激薬、抗コリン薬など)です。
①②③の薬は主に尿の通りを良くする薬ですが、尿の通りが良くなると膀胱の負担が軽減するため、頻尿・残尿感・切迫感などの蓄尿症状も改善する場合が多いです。薬の選択は前立腺の大きさ、年齢、癌マーカー(PSA)、既往症などを考えて行います。前立腺があまり大きくない場合や①-③の薬を使用しても残ってくる蓄尿症状には④の薬を使います。
排尿の症状の成り立ちは複雑であり、生活に根付いた排尿習慣などにも影響を受けます。そのためなかなか治療に難渋することもあり、薬もいろいろ組み合わせて使用する必要となることもあります。膀胱も年齢とともに質が低下しますが、膀胱の負担が大きい状態だと、その質の劣化は早まります。早い段階から適切な排尿習慣と適切な薬物コントロールで膀胱を良い状態に保つことが高齢になっても排尿で困らない秘訣です。
①②③の薬は主に尿の通りを良くする薬ですが、尿の通りが良くなると膀胱の負担が軽減するため、頻尿・残尿感・切迫感などの蓄尿症状も改善する場合が多いです。薬の選択は前立腺の大きさ、年齢、癌マーカー(PSA)、既往症などを考えて行います。前立腺があまり大きくない場合や①-③の薬を使用しても残ってくる蓄尿症状には④の薬を使います。
排尿の症状の成り立ちは複雑であり、生活に根付いた排尿習慣などにも影響を受けます。そのためなかなか治療に難渋することもあり、薬もいろいろ組み合わせて使用する必要となることもあります。膀胱も年齢とともに質が低下しますが、膀胱の負担が大きい状態だと、その質の劣化は早まります。早い段階から適切な排尿習慣と適切な薬物コントロールで膀胱を良い状態に保つことが高齢になっても排尿で困らない秘訣です。
手術療法について
薬物療法でも症状や客観的な排尿状態の改善が得られない場合は、手術療法を検討します。
手術の方法にはいくつかありますが、いずれも尿道から行う内視鏡手術で、目的は肥大を起こしている前立腺内腺部を除去し、前立腺部の尿道を広くすることです。手術の方法としては、①前立腺を小さいチップに分けて除去する(経尿道的前立腺切除術:TUR-P) ②前立腺の内腺をレーザーで一塊として除去する(経尿道的前立腺レーザー核出術:HoLEP) ③前立腺の内腺を尿道側からレーザーで焼き飛ばす(経尿道的前立腺レーザー蒸散術)などがあります(図4)。①はもっとも一般的な方法で、全国でも広く行われている方法です。②は出血量が少なく、大きな前立腺の切除が可能ですが、特殊な機器が必要なため、行われている施設が限られます。③は出血が非常に少なく、抗血小板薬や抗凝固薬などを継続したまま手術が可能な場合も多く、安全性が高い術式ですが、まだ行われている施設は少ない状況です。
手術の方法にはいくつかありますが、いずれも尿道から行う内視鏡手術で、目的は肥大を起こしている前立腺内腺部を除去し、前立腺部の尿道を広くすることです。手術の方法としては、①前立腺を小さいチップに分けて除去する(経尿道的前立腺切除術:TUR-P) ②前立腺の内腺をレーザーで一塊として除去する(経尿道的前立腺レーザー核出術:HoLEP) ③前立腺の内腺を尿道側からレーザーで焼き飛ばす(経尿道的前立腺レーザー蒸散術)などがあります(図4)。①はもっとも一般的な方法で、全国でも広く行われている方法です。②は出血量が少なく、大きな前立腺の切除が可能ですが、特殊な機器が必要なため、行われている施設が限られます。③は出血が非常に少なく、抗血小板薬や抗凝固薬などを継続したまま手術が可能な場合も多く、安全性が高い術式ですが、まだ行われている施設は少ない状況です。
さいごに
手術で良い結果が得られるかどうか、手術の前にしっかりとした評価が必要となりますので、主治医としっかり相談することが大切です。
排尿のトラブルは生活の質を非常に落とします。お困りの際は、近隣の泌尿器科クリニックに是非ご相談ください。
排尿のトラブルは生活の質を非常に落とします。お困りの際は、近隣の泌尿器科クリニックに是非ご相談ください。