大動脈瘤
大動脈瘤とは
大動脈は体の中で最も太い血管で、全身に血液を送っています。心臓から横隔膜までを胸部大動脈、横隔膜から下の部分を腹部大動脈といいます。
大動脈の中には高い圧力がかかっていて（血圧）、動脈硬化などで弱くなった部分があると“大動脈瘤（こぶ）”ができます。
大動脈の中には高い圧力がかかっていて（血圧）、動脈硬化などで弱くなった部分があると“大動脈瘤（こぶ）”ができます。
大動脈瘤が膨らむと何が起こるか
大動脈瘤の膨らんだ壁は弱く、破れてしまう可能性があります。瘤にも種類があり、ポコッと血管の一部が膨らんだ嚢（のう）状のものと、血管全体が膨らむ紡錘形（ぼうすいけい）のものがあります。嚢状のほうが、壁が破れやすいと言われています。
大きくなるまでほとんどが無症状ですが、破裂してしまうと激烈な胸痛や腹痛、腰背部痛、大出血による意識障害などを起こし、病院に到達する前に亡くなることもある恐ろしい病気です。
大きくなるまでほとんどが無症状ですが、破裂してしまうと激烈な胸痛や腹痛、腰背部痛、大出血による意識障害などを起こし、病院に到達する前に亡くなることもある恐ろしい病気です。
破裂するまで気づきにくいのが恐ろしい
大動脈瘤の多くは破裂しない限り無症状ですが、大きくなっていくと咳、血痰、胸痛、背中の痛み、腰痛、腹痛などがみられます。この段階ではすでに破裂する危険性が高まっています。もし破裂したらその死亡率は80-90%といわれています。これによって年間に多くの人たちが命を落としています（日本人の死因第9位）。
動脈瘤は一旦できてしまうと自然に縮小することはありません。有効な薬物療法もありません。そのため、大動脈瘤は破裂する前に治療するのが原則です。
動脈瘤は一旦できてしまうと自然に縮小することはありません。有効な薬物療法もありません。そのため、大動脈瘤は破裂する前に治療するのが原則です。
大動脈瘤の原因―年齢とともに高まる危険性
大動脈瘤は血管の壁が弱くなっている部分にできます。主な原因は、コレステロールや脂肪の蓄積で動脈が硬くなること（動脈硬化）、遺伝の要因などがいわれています。その他には外傷や炎症、感染なども稀にあります。動脈硬化の危険因子である高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や喫煙が瘤の形成に関係しています。高血圧の成因としては食生活（塩分）、ストレスや睡眠不足、過度の喫煙や飲酒、運動不足、肥満、遺伝的素因が挙げられます。
早期発見のために出来ること
先ほどお話したとおり、大動脈瘤は無症状なことが多いです。他の病気で受診して検査をしたときに偶然発見されるケースが多々あります。そのため、生活習慣病や血管の病気を持っている方、ご家族が大動脈瘤だった方は、かかりつけ医や人間ドックで、超音波検査やCT検査などを含めた定期的な検査を行うことが大切です。
大動脈瘤の治療―内服薬では治らない
一度膨らんでしまった大動脈瘤は、内服薬で治る病気ではありません。破裂する前に外科的治療、カテーテル治療を行うことで長生き出来る可能性が高いことが研究から分かっています。
当院では、大動脈瘤の直接的な治療だけでなく、まずはこれ以上進行しないように生活習慣病の治療と禁煙をお願いしています。近年、口内環境が悪いことが関与すると指摘されているため、歯科の受診など口腔ケアも重要です。
当院では、大動脈瘤の直接的な治療だけでなく、まずはこれ以上進行しないように生活習慣病の治療と禁煙をお願いしています。近年、口内環境が悪いことが関与すると指摘されているため、歯科の受診など口腔ケアも重要です。
外科的手術
全身麻酔で胸やお腹を10-20cmほど開いて、大動脈瘤を直接医師の目で確認しながら治療します。大動脈を人工血管に取り換えるこの治療は、長期的には最も成績が良いですが、手術による患者さんの負担がとても大きくなります。そのため、比較的若い年齢の患者さんが外科的手術を選択することが多いです。
カテーテル治療
カテーテル治療は、足の付け根（そけい部）を3-5cmほど開いて、血管内に細い管（カテーテル）を通し、ステントと人工血管（グラフト）を組み合わせた器具で、血管の内側から動脈瘤を治療する方法です。瘤は切除しないので残りますが、血流がなくなるのでは破裂を阻止できます。
外科的手術と比較して体の負担が小さいことから、高齢の方でも比較的安全な治療が可能です。しかし、大動脈瘤の血流が残存・再発する可能性があること、耐久性で劣る可能性があることなども指摘されています。
当院は2019年9月より、血管内治療専門のIVR科を新設し、大動脈瘤に対するカテーテル治療体制を拡充し、適切な治療選択肢を提供しています。
外科的手術と比較して体の負担が小さいことから、高齢の方でも比較的安全な治療が可能です。しかし、大動脈瘤の血流が残存・再発する可能性があること、耐久性で劣る可能性があることなども指摘されています。
当院は2019年9月より、血管内治療専門のIVR科を新設し、大動脈瘤に対するカテーテル治療体制を拡充し、適切な治療選択肢を提供しています。
最先端医療器具を用いるIVR治療
IVRは「Interventional Radiology（インターベンショナルラジオロジー）」の略で、X線やCT、超音波などで体の中を見ながら、カテーテルや針を用いて病気を治療することです。
傷が小さいので、体への負担が圧倒的に少ないのが特徴です。心臓や脳血管、消化管といった領域ではすでに普及し、それぞれの専門の医師が治療を担当しています。
しかしそれ以外の領域、特に比較的稀な病気に対するカテーテル治療に関しては、IVR科が担当します。
傷が小さいので、体への負担が圧倒的に少ないのが特徴です。心臓や脳血管、消化管といった領域ではすでに普及し、それぞれの専門の医師が治療を担当しています。
しかしそれ以外の領域、特に比較的稀な病気に対するカテーテル治療に関しては、IVR科が担当します。
大きな手術に気が進まない方へ
大動脈などの手術は体の負担がとても大きいです。手術を受けた方の中には病気は治ったけれど、自宅へ退院できていないという方もいらっしゃいます。大手術に思い悩んでいらっしゃいましたら、ステントグラフト治療の可能性について一度ご相談ください。
おわりに
当院では、患者さんの状態に合わせて、保存治療、外科的治療、カテーテル治療を適切に選択することを心がけた診療を行っています。破裂性大動脈瘤で救急受診される患者さんの多くは、今まで大動脈瘤の指摘を受けたことがない方です。これは血液検査や一般的な健康診断では指摘できないのが理由の一つです。そのため、普段から生活習慣、口腔ケアなどに気を配っていただきたいです。ご家族に大動脈疾患の患者様がおられる方は、専門医とご相談いただければと思います。