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前立腺がん



前立腺がんとは

前立腺がんとは、男性にだけ存在する前立腺から発生するがんです。 前立腺がんは高齢者のがんといわれており、約90%が60歳以上の方で、近年 急激に増えてきています。前立腺がんは一般的に進行が遅く、発がんしてからがんと診断されるま でには数年かかります。 また他のがんにくらべ、 薬が効きやすいという特徴も あります。 現在、 健康診断でPSA (前立腺特異抗原) の項目が追加されたた め、 無症状でも発見されるようになりました。

前立腺がんの症状

初期

初期では、自覚症状がほとんどありません。

前立腺肥大と同じような症状

  • 尿の出が悪い
  • トイレが近い
  • 残尿感がある
  • 尿の切れが悪い
などの症状が出始めますが、 前立腺がんでも同じ様な症状が見られます。

骨転移による腰痛・四肢痛

症状が進み、骨転移に伴って下肢痛・腰痛が起こります。
そのため、前立腺がんと気付かずに整形外科を受診した際に前立腺がんが発見される事もあります。

前立腺がん検診の流れ

一次検査(血液検査)

PSA測定 ・・・血液検査です。
PSAの正常値は4ng/mlです。
PSAが正常値を超えている場合は、 次の検査に進みます。

二次検査(超音波検査・直腸診・MRI検査)

【超音波検査】
直腸より超音波プローブを挿入し、前立腺の大きさ、形を見ます。

超音波検査の画像

【直腸診】
肛門から指を入れ前立腺の大きさや硬さ、 前立腺表面の凸凹、触れると痛みがあるかなどをを触診します。

直腸診のイメージ

【MRI検査】
前立腺がんの有無、進行度合いを確認します。

これらの検査で前立腺がんの可能性がある場合、前立腺生検検査を行います。

前立腺生検検査とは

30分程度、1泊2日入院で行う検査

前立腺がんの疑いがある場合、 診断を確定するために前立腺生検を行います。
前立腺生検は局所麻酔でも行える検査ですが、患者さんの苦痛を少しでも軽減するために、当院では全身麻酔または脊椎麻酔下で検査を行っています。検査はほとんど痛みを感じません。
検査は手術室で行います。 麻酔をかけた後、 肛門から超音波プローブを挿入し、前立腺を観察しながら生検針を刺して前立腺組織を12か所を採取します。 採取した細胞を顕微鏡で観察しがん細胞の有無を調べます。
当院では会陰 ( 陰嚢と肛門の間の部分 ) から穿刺をする、経会陰的生検で行います。
検査時間は麻酔時間を含め30分程度です。 患者さんの安全を考え、1泊2日の入院で検査を行っています。

前立腺生検で起こりうる合併症

前立腺生検は比較的安全な検査ですが、
合併症として
  • 出血
  • 急性前立腺炎
  • 尿閉
などが起きる場合があります。
1泊2日の入院で検査を行っているのは、この合併症が起きた場合でも 迅速に最適な処置を行うためです。

検査の注意点

検査を決められた際は、以下のことにご注意し医師にお知らせください。
  • 血液を固まりにくくする薬 (バイアスピリン・ワーファリン・ぺルサンチンなど ) を飲まれている場合
  • 痔や肛門の手術を受けたことがある場合

退院2週間後の外来で検査結果を説明

生検の結果は、退院後2週間後の外来でご説明いたします。
前立腺がんではなかった場合は、定期的なスクリーニング検査を行いながら経過観察となります。

前立腺がんと確定した場合

他臓器に転移がないかCT、骨シンチ検査を行ってがんの進行度を確認していきます。
これらの結果をふまえて治療方法を決定していきます。

前立腺がんの治療法

前立腺がんの治療は様々であり、それぞれ長所と短所があります。そのため、がんの進行度や患者さんの全身状態に合わせて治療法を選択することが大切です。当院ではインフォームド・コンセントを大事にし、患者さんが納得できる最適な治療法を模索していきます。

転移がない場合の治療法

明らかな転移がない場合はがんの完治を目指した根治的治療の適応となります。
手術療法、放射線療法、小線源療法はいずれも、疾患の完全治癒を目ざしてその原因そのものを取り除く根治的治療を行います。

手術療法

【手術療法の特徴】
前立腺を全摘し、膀胱と尿道を新たに吻合します。全身麻酔下の手術で術後10日前後の入院が必要となります。術後合併症の一つに尿失禁があります。多くの方は一過性で尿失禁は改善しますが、数か月程度回復に時間がかかります。5%程度の方に1日数枚の尿パッドを使用する尿失禁が残存してしまいます。また、残念ながら勃起機能や射精機能は失われてしまいます。
手術をお勧めする場合として、重篤な既往症がなく期待余命が長い方(概ね75歳まで)、悪性度の高い限局がん、今後排尿障害をきたすような前立腺肥大症がある方などです。
【術式の種類】
従来の下腹部を切開して手術を行う開腹手術、腹腔鏡を用いた腹腔鏡下手術、さらに手術用ロボットを操作することで腹腔鏡手術を行うロボット支援手術があります。近年では手術中の出血が少ない腹腔鏡手術やロボット支援手術が主流となっています。
当院では日本泌尿器科学会施設認定を取得しており腹腔鏡下手術を実施しています。

放射線外照射治療

【外照射治療の特徴】
前立腺に放射線を体外から分割照射することでがんを治療します。治療期間は一般的な外照射で約2か月程度の外来通院が必要です。外照射はがんが前立腺からはみ出した局所進行がんでも治療可能で、ホルモン治療を併用することが一般的です。合併症としては、放射線による放射線性粘膜障害があります。直腸粘膜障害による下血、尿道や膀胱の粘膜障害による血尿や頻尿などがあります。特に治療後数年間経過したところで発生する晩期放射線性障害は難治性で、頻度は5%程度と言われています。
【外照射の種類】
・強度変調放射線療法(IMRT)
コンピューター制御により照射線量を管理し治療効果を高めた治療法です。
・重粒子線治療
局所への線量の集積性に優れ、治療期間も3週間程度と短いのが利点です。
実施可能な施設は限られており神奈川県内では県立がんセンターのみ施行可能です。

小線源治療

放射線を放出するヨウ素125を密封した数㎜大の線源カプセルを前立腺内に60-80個留置し、前立腺内部からがん病巣に放射線を照射する治療です。通常は4-5日の入院加療を必要とし、麻酔下で線源カプセルを挿入します。尿道や直腸への放射線線量は少ないとされますが、前立腺周囲へ広がるがんに対しては不向きであり、早期の前立腺がんが対象となります。また、前立腺肥大症の方は治療後に排尿障害をきたすことがあるため適応外となります。

※当院では前立腺がんに対するIMRTは現在準備中のため、近隣の専門施設へ治療をお願いしています。小線源治療については近隣で実施可能な施設は横浜市立大学医学部附属病院となります。

転移がある場合の治療法

ホルモン治療

診断時に既に転移がある場合は、残念ながら完治は困難で薬物治療を選択します。
本来、男性ホルモンは前立腺がんの増殖・生存に不可欠なもので、男性ホルモンが前立腺がんに作用しないようにブロックする薬物治療をホルモン治療と言います。
ホルモン治療は、男性ホルモンを産生しないように脳からの指令を止める皮下注射製剤(LH-RHアゴニスト剤/アンタゴニスト剤)と男性ホルモンが前立腺がんに作用するのをブロックする抗男性ホルモン剤の内服を組み合わせて投与する治療です。

ホルモン治療は根治する治療法ではない

外来通院での治療が可能ですが、根治する治療法ではありません。また、長期にわたりホルモン治療を継続すると治療効果が減弱し、病気が進行してしまうことがあります。その場合は新規ホルモン剤(アンドロゲン受容体シグナル阻害剤)や化学療法(抗がん剤治療)へ治療法を切り替えていきます。

ホルモン治療の副作用

倦怠感、ほてりやのぼせ感(ホットフラッシュ)、肥満や体重増加、骨密度低下、勃起不全、心血管系疾患の発症、肝機能低下などがあります。

化学療法

いわゆる抗がん剤による治療です。ホルモン治療が効かなくなってしまった前立腺がんに対して行われます。ドセタキセル、カバジタキセルという種類のお薬を使用します。副作用として骨髄抑制(免疫力低下、貧血、易出血性)、脱毛、嘔気、食欲低下などがあります。

その他の治療

骨転移治療薬
前立腺がんは骨へ転移しやすいことが特徴の一つです。骨修飾薬(骨転移部の骨破壊を防止し骨痛や骨折を防ぐ)や塩化ラジウム223(α線による骨転移治療薬)による治療も行っています。
緩和的ケア
前立腺がんの進行により様々な苦痛症状がみられた場合、緩和医療科の専門医や認定看護師と密に連携し、鎮痛剤の投与をはじめ身体的・精神的な苦痛の緩和に努めます。

当院の泌尿器科の取り組み

年間150件以上の前立腺生検を実施

年間150件以上もの前立腺生検検査を実施しています。
検査結果に基づき、治療方針を決定しています。

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腹腔鏡手術の積極的導入

当院では従来の開腹手術に代わって、低侵襲な腹腔鏡手術を積極的に採用しております。開腹手術よりも出血量が少なく、また高精細画像にての観察が可能であるため、開腹手術よりもより繊細かつ安全な手術が可能となっております。しかし病気の進展具合によっては腹腔鏡下手術よりも開腹手術のメリットが多い場合もあるため、個々の病状によって治療方法を相談させていただいております。